じゃっくぽっとラボ

UE4の技術ログあつまれ~

ムービーの構図・カット割りの例

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ボスパックンさん
いわゆるシネマティックムービーを作るときの参考になれば~。

ムービーってどう撮ればええねん問題

カメラの動かし方も分かった。シーケンサーも理解した。
で、この後ぶち当たるのがどんなムービーを取ればいいの?というところです。
映画技法、絵コンテ、漫画のネームあたりの知識があれば、ある程度の流れや良しあしの判断がつきますが、そんなもの持ち合わせていません。
そんなときは、例を集めて模倣するのが一番手っ取り早いです。

「なぜこのカメラワークなのか、なぜこれを映すのか」を例を挙げながら解説します。 挙げたポイントをかいつまんでムービーを構築すれば、それっぽくなるのではないでしょうか。

サンプル3つ

マリオサンシャイン ボスパックン

長さ:23秒
子供向けの作品なので、短めの尺になっています。

  • 2:00 印象的なシルエットを生かしたドアップからスタート
  • 2:03 咆哮のシーンは、巨大な頭身であることを伝えるためにマリオの目線の高さから見上げるようなカメラ
  • 2:08 床に亀裂が入ったことが分かり、パックンとマリオのリアクションも見えるカメラ位置
  • 2:18 落下のシーンで上からではなく、あえて真下から撮ったのは、空を丸く映すことで印象に残すため(撮れ高
  • 太陽をのぞかせる(マリオサンシャインだから!)
  • ゆっくりカメラをロールさせることでレンズフレアが動くようにしている。

短いながらも、印象に残るムービーとなっています。さすがN天堂。
メディチックではありますが、セリフが一切ない中でボスパックンのキャラクターを伝え、理屈の通ったカメラワークをしています。

Metal Gear Rising  LQ-84

長さ:1分(会話シーン除く)
開発はプラチナゲームズなだけあってこういう演出ムービーはお手の物。
目まぐるしく進む展開、でも何が起こっているかちゃんとわかるムービーになってます。

  • 0:07 異変に気付き、曲がり角の先を見つめる雷電、カメラごしのプレイヤーも同じように感じるよう雷電の背後へ
  • 0:12 しかし、突然背後からノコギリ。このノコギリを画面外から登場させるために上記のカメラワークになったと考えられます。
  • 0:15 アゴ火花(なくてもストーリーは伝わるが、美味しい演出)
  • 0:22 雷電の後頭部から、床を切るノコギリへズーム(プレイヤーへ状況説明と位置関係を把握させる)
  • 0:32 建物が壊れ、天地が狂うシーン。プレイヤーを混乱させないために、滑っている足を映してから重力で落下するコンテナを映す。
  • 0:35 着地する床が初めて見えるとき、一発で床と分かるようにタイルのテクスチャ。コンテナと雷電の落ち影が画面内に映るライト位置。
  • 0:39 1秒弱ほどですが、雷電が上を見上げます。間を作り、プレイヤーに「この後、重要なことが起こるぞ」と認識させる大切な1秒です。
  • 0:42 ぶった斬ったコンテナから姿を現すLQ、カッケェ。(最大の見せ場なので上記の間が重要だった)
  • 0:45 ノコギリを受け止めた後、爪で攻撃されます。ここで一瞬爪が光るのはプレイヤーに視線を映してほしいからですね。(視線誘導。ちなみに雷電を見ていたとしても彼の視線が爪に向くので2重の視線誘導になっている)
  • 1:00 ちょうど1分のタイミングでLQの全身カット。ここでムービーがトーンダウンします。緊張のシーンは長くても1分が良いのでしょうか。

アクションの激しいムービーはそれぞれのカットが一瞬で過ぎ去っていきます。
何が起こっているかプレイヤーに瞬時に理解してもらうために、あらゆる配慮がされていますね。

ゼルダの伝説 スカイフォードソード ギラヒム

長さ:2分
会話シーンのあるパターン。テキストを読ませるため、カメラワークがゆっくりだったりやキャラの動きは最小限だったりします。

  • ~0:20 ボスの姿は見えているが、顔を見せるまで20秒も焦らす
  • 0:42 最初は敵対していない状態なので普通のカメラワークですが、42秒の部分でカメラが傾き画面がななめになります。プレイヤーに少しずつ違和感を与えます。(漫画でもよく使われますよね)
  • 0:57 扉の正面にカメラが回ります。これは話の流れやキャラクター関係なくこの構図が撮れ高として使えるからです。
  • 1:00 カメラワークが絶妙ですね。かなりゆっくり寄っていき緊張を高めて、ゆっくりとしたカメラシェイクが恐怖感を出しています。
  • 1:48 ようやくボスっぽいムービーになりますが、画面がななめになってますね。最初に画面が傾いていた伏線がここで回収されるわけです。

会話のあるパターンは、プレイヤーが操作できない時間が長くなりダレてしまうことが多いです。 ゼルダのように作りこまれた世界観やDMCシリーズのようにキャラクターがジョークを言うことで体験が成り立つゲームで効果を発揮します。
もし会話シーンが長くなるようなムービーを作る必要があるなら、プレイヤーに「もっと見たい」という工夫が必要になります。(ギラ様の場合は不安定さがプレイヤーの見る動機になっていた)

まとめ

さて、3つ例を紹介しましたが、展開の原則としては以下のような感じでしょうか。

  • 日常パートから異変発生
  • そのボスの能力を示す演出・展開
  • 敵対状態を示す(咆哮など)
  • プレイヤーに与えたい体験の要素を入れる

また、カメラワークには必ず理由や意図があることがわかりました。

  • 状況がすぐわかる易しいカメラ
  • 盛り上げるためのカメラ
  • 撮れ高・画面構成のためのカメラ

カメラに意味があることが分かると、映画やアニメを見るときにもっと楽しめます。
3Dのゲームが発売された当初も映画を参考に作られたのではないでしょうか。

余談ですが、自分がいつも参考にしてるのはゲームではなくて映画のことが多いです。
ストーリーテリングのために何十年もノウハウを積み重ねて洗練されています。レンタルDVDには監督の音声解説から、カメラワーク・ライティングの意図を汲む事が出来ます。
あ~そうでした。ライティングの話もありましたね。
それはまた別の機会に。